相続土地について考える
2023/09/30
山林・農地の相続に関係する悩み
山林・農地を相続したけどどうしたら良いの・・・
令和5年4月27日に、相続土地国庫帰属制度が始まりました。相続又は遺贈(遺言によって特定の相続人に財産の一部又は全部を譲ること)によって土地の所有権を取得した相続人が、一定の要件を満たした場合に、土地を手放して国庫に帰属させることを可能とする制度です。
相続登記義務化に引き続き、相続関係で所有者不明土地が発生することを防止するために施行された制度になります。かつては、山林は建築資材や燃料となる薪、山菜やキノコ・獣肉を調達する食糧源として、加えて豊かな水を貯えるものとして大切に管理されてきました。また、農地も生きていくうえで欠かせない食料の供給地として大切にされてきました。
そのため、子や孫のために自分が元気なうちに次世代にどのように財産を残していこうか?と現在考えている世代の方々は、「山林や農地といった財産を次世代が困らないように引継ぎしていこうか」と悩んでみえます。別件の境界確定測量の立会確認の際に相談を受けることも多々あります。
しかし現在では、家を建てる際は建築資材も含めてメーカーが全て準備して頂けますし、ガスや電気の普及に伴い煮炊きや暖房として薪を使うことも少なくなりました。野菜や肉などの食料も自分で調達している方は少ないでしょう。商売として行うなら別として、家庭用として栽培・採取するよりも購入したほうが手間暇を考えると安く済んでしまう場合もあります。
結果、山林ではせっかく適齢期を迎えたスギやヒノキも間伐もされずに放置され、下草狩りなどもされていないことから、荒れ果てて害獣のすみかとなっています。農地も昭和初期の様に家を継いで守っていくといった風習は、家督相続制度の廃止や仕事をする場所が全国・全世界に広がりつつある現在では、薄れつつあります。その結果、「管理したくても近くに住んでいないから無理」「年に何回も草刈りするのは大変」といった理由で、耕作放棄地となっている農地もたくさんあります。
このような背景もあり、山林や農地は、相続の際に受け取りたくない、世間でよく言われる「負動産」として扱われるようになってしまいました。つまり、相続をする側は「どのように引き継いでいこうか」と考え、受ける側は「どのようにしたら引き受けないで済むのか」と考えるというギャップが発生している状態です。
上記のような状況を踏まえ、「山林の相続について次世代に引き継げるように測量を考えているのだが、したほうが良いのだろうか」と相談を受けた時に、事務所の売り上げを考えるなら「ぜひぜひやったほうが良いです!」と言いたいものの、実際は、「相続をしたとしても山林は売買などが難しいうえに価格も安いため、測量費用は丸々の出費となります。農地も農地法の関係をクリアするのが難しいので、簡単には売買もできません。最近は不動産よりも金銭で遺してくれた方がうれしいという傾向にあるので、一度お身内の方によく相談してください。それでも測量したいというのではいつでもご相談ください」とアドバイスしています。
そもそも、山林や農地は宅地に比べて面積が大きいこと、特に山林は傾斜もあり見通しも悪いことに加え、そもそも調査士の中には山林の測量などしたことが無い方も多いことから、これくらい貰えるならやっても良いかな?ということで、売買ができないにもかかわらず測量費用が高額になりがちです。とは言え、山林の場合、境界の点間が長いことや境界点の認識についての許容幅が大きいことから、慣れればやり易い測量なんですけどね。
冒頭に記載した通り、相続土地国庫帰属制度が始まったことから、「次世代が相続したくなければ手続して放棄してくれれば構わない」という考えもありますが、
・境界が明らかでない土地・所有権の存否や範囲について争いがある土地
・隣接する土地の所有者等との争訟によらなければ管理・処分ができない土地
等の要件に該当する場合には、引き取れない土地として取り扱われる可能性もあることから、境界が明確でない場合には申請を却下される・承認されない可能性もあります。今ご存命である、実際に山林・農地を管理した実績のある方が境界について示しておかなければ、せっかくの制度も利用することができないかも知れません。
【参照:相続土地国庫帰属制度の概要】https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00457.html#mokuji3
現在、このような山林や農地の境界について、目的や必要に応じてなるべく費用が掛からずに次世代に申し送りできる方法が無いか、というご要望を満たすことができる商品をご提案できればと考えている最中です。とりあえず気になるという方はお気軽にご相談ください。