文系出身ですが3
2023/05/06
〈その2から続く〉
・結局最初に立てたストーリーはあくまで仮説であり何の説得力もないこと。
・明確な裏付けが無いことには相手を納得させるだけの論ではなくファンタジーであること。
作業を進めれば進めるほど、自説を展開するための知識が足らないこと、裏付けるための資料が少なすぎることを思い知らされ、進んでは戻りを繰り返し、進めるならまだしもすごろくの様にスタートに戻ったりでいたずらに時間ばかりが過ぎていくことに只々焦りが募るばかりでした。結局その年は書き上げることができず敢え無くもう一年となりました。
前年の反省を基に4月から大学図書館を通じて資料収集を進め、9月には全てのバイトを区切りとし、残りは論文を書くことに集中しました。結果、思ったより成績は芳しくありませんでいたが、何とか卒業はできました。ただ、論文を書き上げた時の達成感は言うまでもありませんが、自分の仮説を裏付けるために資料をかき集めて読み込み、前年のバラバラで書いている本人も何が言いたいかよくわからない文章とは違い、ストーリーと根拠とがパズルのようにパチンパチンと組み合わさっていく様子がとても楽しく、一年余計にかかってでも残って良かったと思いましたし、むしろ論文も無しに卒業してしまった人たちは何のために大学にいたのだろうかとすら思うようになりました。
一方、1年余計な学費の遣り繰りのために平日は測量(こちらは4年時に短期で募集していたバイトが留年でそのまま延長)と土日は家具の配送とバイト三昧だったせいもあり就活もしていなかったことから、卒業はできても就職先はありません。どうしようかと思案に暮れて、先ずは日本で歴史と言えば京都か奈良だろ!ということで、足しげく奈良まで通って遺跡発掘等の仕事を探しました。でも、発掘のバイトであれば「若い人は大歓迎」でしたが、如何せん天気やその時の現場の都合で安定した仕事はありません。しかも、基本趣味の延長上でやっているボランティア寄りな人が多いことから給料も高くない。研究職などを当たってみましたが、こちらは公務員的な立場が多く欠員が出ないことには募集がかからないから、運が良ければ1年で求人が出るけど、運が悪ければ10年後とかもあり得るし、そんな状況だから出たとしてもすごい倍率になるとのことでした。
結局夢を見ることはあきらめて、地元で測量の仕事を探すことになりました。ただ、元々大学時代も運動ばかりで勉学が疎かになっていたこで体力には自信もありましたし、幼少期から近所の野山を走り回っていたことに加え、地図を眺めながら緑や茶色の色分けを見て「ここは結構大きな街だなぁ」などと楽しんでいた自分にとっては、体力ばかりでなく頭も使うこと、自分で地図を作る側になる測量は、文系出身者が主に就職する銀行マンや営業マン、事務・総務系事務員になるよりも遥かに魅力的でした。また、料理職人である父の姿を見て、技術者として仕事をすることについて何となく憧れていたせいもあるかも知れません。
何だかんだと、新卒大学生らしく就活することはせずに情報誌とハローワークで測量関係の会社を探し、売込みして就職が決まりました(今はわかりませんが、当時ハローワークでは新卒者はハローワークを通じて紹介することはできないため、自分で見て自分で連絡するなら良いよ!とのことでした)。〈つづく〉